ご自身が亡くなった後に遺された方々がご自身の残された遺産で争うのは悲しいことだと思います。それがご自身の親族の方なら猶更です。
残されたご遺族の方たち、特に相続をされる方たちの遺産に関わるご負担を軽減するため、ご自身のご遺族の方に対するご遺産に関するご意思の表明のためにも遺言を残されるのは大切な事だと思います。
遺言を作成しておくメリット
・ご自身の希望通りに財産を相続人に引き渡せる
例:長年連れ添った配偶者に、財産の全部を相続させたい
・遺産分割協議書を経ずに財産の分配が可能になる
遺産相続では、基本的に「相続人全員」が遺産相続に関して遺産分割協議を行います。その中で「相続人全員の合意」を経て、実際に遺産の分配が行われます。
例:音信不通の相続人が居たりすると手続きがストップしたりしてしますかも知れません。
しかし有効な遺言書がある場合にはその内容に基づいて相続の手続きを行うことができます。
また、その際には遺言執行者が指定されていればさらに手続きがスムーズに進みます。
遺言の種類による違いや、そのメリット・デメリット
自筆証書遺言
・メリット
費用がほとんどかからないので手軽に書ける。(実質330円で作れる)
遺言を作成したこと及びその内容を他の人に知られない様に出来る。
・デメリット
遺言の実現が不確実
遺言を見つけた遺族は、家庭裁判所に検認の申し立てが必要
検認をしないで遺言を執行すると、5万円以下の過料に処せられる
遺言の方式に不備があると無効になる可能性がある
「全文自筆」は年齢によっては、なかなかハードルが高い
公正証書遺言
・メリット
公証人があらかじめ方式や内容の実現可能性を確認するため、確実に遺言を残すことができる
公証人が遺言者の遺言能力の有無を確認するので、この点について後ほど争われる可能性が低い
開封時の家庭裁判所の検認が不要
遺産分割協議が不要になる
原本が公証人役場にほかんされるので改ざん・紛失の恐れがない
・デメリット
公証人手数料がかかる
作成時のコストがかかるため気軽に再作成(内容の変更)ができない
当事務所では公正証書遺言を推奨しております。上記に記載した通りのメリット・デメリットが存在しますが、交渉証書遺言の方がメリットが多く、デメリットが少ないのが理由です。
公証人遺言作成の流れ
当事務所が推奨している公証人遺言の作成の流れを記載します。
・遺言者が公証人と証人に遺言の内容を話し、公証人がこれを筆記する
・公証人は、記録した文章を遺言者と証人に読み聞かせるか、閲覧させるかなどして、筆記の無い様に誤りがないかを確認し、遺言者と証人の署名・捺印を求める
・その証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに公証人が捺印署名する
ちなみに2023年6月27日現在の公証役場への手数料は以下となります。
(遺言する財産の価額) (公証人手数料)
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5.000万円まで 43,000円
一億円まで 43,000円
一億円を超える場合も定められていますが私が受けることはなさそうなので割愛させて頂きます。
ちなみに上記の金額には以下の点に注意が必要です。
・財産の相続を受ける人ごとにその財産の価値を算出し、それを上記基準に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、その手数料合算して当該遺言書全体の手数料を算出します。
例:遺産総額1,000万円 法定相続と仮定すると配偶者一人(1/2)、子供2人(1/2の1/2ずつ)
・配偶者 500万円 11,000円
・子供A 250万円 11,000円
・子供B 250万円 11,000円
合計 33,000円
・遺言加算と言って、全体の財産が1億円以下の時は、上記に加えて11,000円が加算されます。
・公証人に出張(病院とか自宅とか)してもらう場合には、日当・交通費などが別途かかります。
・公証遺言の作成を行政書士などに依頼した場合には、更にその費用が掛かります。
相続についての遺言人(遺言を作成する方)の確認
・節税を主体としたいのか(税理士さんにご相談下さい)
・相続をスムーズにしたいのか(当事務所など行政書士にご相談下さい)
各方式の遺言書作成
・自筆証書遺言作成の流れ
遺言者との面談、遺言内容のヒアリング
作成資料の収集
案文作成
依頼者への内容の最終確認
案分お渡し・自筆での作成
出来上がった遺言のチェック
納品
・公正証書遺言作成の流れ
遺言者との面談、遺言内容のヒアリング
作成資料の収集
案文作成
公証人への案文・作成資料の送付、作成場所の連絡、見積依頼
公証人からの案文チェック
依頼者への内容の最終確認
作成日時調整
遺言書作成(証人立ち合い)
遺言執行について
遺言執行に際しては法律事務も多分に含まれることが多く、専門職の人間が執行者となることが望ましいです。
公正証書遺言作成の場合は指定されている場合がほとんどだが、遺言執行者の指定があれば相続発生後の相続手続き(特に各種財産の名義変更・解約等)が非常にスムーズになるため出来るだけ指定しておいた方が良いと考えます。
遺贈について
遺贈は相続者全員の承認が必要なので「相続人以外への遺贈(例えば愛人への)」は相続者が承認を行う可能性が低いから遺言執行者を立てておく方が遺言執行が遺言人(遺言を作成する方)の意思を実現するのはスムーズです。
遺言書を作成しておいた方が良いケース(詳細)
・遺産相続で争いにしたくない
・相続手続きにかかる時間や手間と精神的な負担を軽くしてあげたい(遺言執行者の指定など)
・夫婦の間に子供がいない(遺言人(遺言を作成する方)の親や兄弟姉妹が法定相続人になる)
・配偶者以外との間に子がいる(前婚時の子または愛人との子)
・内縁の妻、息子の嫁、孫など法定相続人以外に財産を与えたい
・相続人同士の仲が悪い、または行方不明者が居る
・海外在住者(永住者)が居る
・家が自営業(個人事業主)である(事業承継を考えると)
・遺産分配の方法や割合を指定しておきたい
・相続人の人数や財産の種類、金額が多い
・配偶者(夫または妻)がすでに他界している(相続人が子だけになる。親の意見が無いので争いになりやすい)
清算型遺言
遺産を換金して、相続人等へ金銭で分配するタイプの遺言。(一部の財産だけの指定も可能)
金銭で相続人に分配できるので非常にスムーズなのですが、遺言執行者が単独で行う場合でも関連する機関が不慣れな事が多いので換価が滞る場合が容易に想定されます。
特に不動産売買に関しては関連する他士業も多く事前に実施しておいた方が良いこともあるため清算型遺言を実施する上では注意が必要です。
なかなか手続きの知識が必要そうなお仕事ですね。
全部自分で調べてやるのはなかなかハードルが高いでしょう。
それなら専門家に聞いた方が早いし確実です。