書いてるレベルから言うと書評ではなく読書感想文なんですが。。。

対象書籍

書籍名:失敗の本質 日本軍の組織論的研究
出版社:中公文庫
著者:戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎

大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用することをねらいとした本書は、学術的な共同作業による、戦史の初の社会科学的分析である。

読後感

実はこの本、最後まで読めてないんです。読み進めていくのが辛すぎて。
何度もチャレンジして何度も挫折してきました。

「そうだよね。自分もそう判断して失敗してしまうよね」とか「その状況だと、そう判断した指揮官の気持ちはわかるよね」が提示されるケース毎に思えてしまって「もうこれ以上読めない」と挫折してしまっています。

記載されている「現代の組織一般にとっての教訓」

同じ釜の飯を食った仲間が操縦する機体が攻撃から空母へ帰還した。空母の着艦甲板上では次の攻撃に備えて直掩の戦闘機やら爆撃機、雷撃機が準備をしている。

机上で行われる演習では100人居たら100人の指揮官が「攻撃を優先し、帰還した機体の着艦は後回しとする」と答える状況。
ところが、「帰還した機体の着艦を後回しにすると言うことは燃料切れを起こした機体が海面に墜落することを容認すること」を意味する。
何とか帰還した同じ釜の飯を食った仲間の墜落を回避し無事に着艦させたいと思う事は感情的には同意されるかも知れません。
でも机上演習での正解は攻撃を優先し、帰還した機体の着艦は後回しとし、海面への墜落を容認するのが正解なんです。

こうした理論と感情、言ってしまえば感情を抑制して正解を選び取る冷静さが日本の企業の経営者、戦争で言う指揮官すべてに備わっているのかを本書は問うていると思います。

戦争では分かりにくければ経営で例えると

家族で経営している企業体があるとします。
配偶者や子供が新しい事業を発案します。
経営者として可能性があれば推奨します。そして発案が実行されます。
しばらくの時間の経過で可能性が現実として否定される事態に陥ります。
ちょっと手掛けるのが早かった。この企業体では実現に要するリソースが足りず更なる相当の資本投下が必須である。

経営者ですから、最初の判断にはそうした間違いは少ないでしょう。経営者なんですから。
でも、ここから「どうやら身の丈に合っていない事業だから撤退しようと思う。しばらく次の事業を開始するまでは既存の事業に専念して欲しい」と損切りできる日本人の経営者はどの程度いるのでしょうか。

「もうちょっと工夫すれば多少は改善できるはず」、「時流が追い付けば爆発する可能性が高い」
血を分けた家族が発案し、発想そのものは優秀と感じられる事業に対して、そうした判断をしてしまうとして、肉親として責められるものではないのかも知れません。

でも判断するのは経営者です。戦争における高級指揮官です。
感情を排して戦況を正しく冷静に判断して次の行動への指針を与える。
優秀な指揮官、優秀な経営者とはそうしたものなのではないでしょうか。

でも、私たち平凡は指揮官・経営者は間違えます。
撤退ではなく、状況を改善するための行動を起こします。それが概ね泥沼と想像していても。

大東亜戦争において、日本軍の指揮官は陸軍・海軍を問わずそうした過ちを犯して戦争に敗れました。
本書は、これでもかと日本軍陸海軍の指揮官の過ちを指摘します。

「そりゃそうだよね」、「自分も同じ判断してしまうかも知れないよね」そんなお思いが読み進める事例毎に積み重なります。

だから私は学生時代に最初に本書のハードカバーを手にした時から何度もチャレンジして安価で手軽に持ち運び可能な文庫本を購入しても最後まで読み進めることが未だに出来ておりません。
きっと「失敗の本質」を何となく理解していても、それを回避するだけの心構えが出来ていないのだと思います。

最後に

私には経営者としての覚悟が足りないのでしょう。
この読書感想文をお読みになって、本書を購入され、私と同じ感想をお持ちになった方々がいらっしゃっても、責める気持ちは皆無です。

ただ、本書は語り掛けます。
日本の組織の「失敗の本質」は旧軍時代から現代に至るまで、それほど変わることなく組織の中にあることを。
そして、これからも一定数の日本の組織は本書が指摘した「失敗の本質」から逃れることが出来ないのかも知れないことを。

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