行政書士登録されて日本行政書士会連合会から送られてくるものの一つに「行政書士倫理綱領」があります。
具体的には以下です(行政書士倫理綱領を貶める意思はありません)

行政書士倫理綱領

行政書士は、国民と行政とのきずなとして、国民の生活向上と社会の繁栄進歩に貢献することを使命とする。
1.行政書士は、使命に徹し、名誉を守り、国民の信頼に応える。
2.行政書士は、国民の権利を擁護するとともに義務の履行に寄与する。
3.行政書士は、法令会則を守り、業務に精通し、公正誠実に職務を行う。
4.行政書士は、人格を磨き、良識と教養の陶冶を心がける。
5.行政書士は、相互の融和をはかり、信義に反してはならない。

倫理綱領でもあり、行動指針でもありますね。
著名な言語学者、国語学者である金田一春彦先生が監修されています。

ここのところ毎日、この倫理綱領を眺めながら仕事(現状では業務の勉強ですが)をしています。
それである時にこの倫理綱領にちょっとした違和感を感じました。

きっかけは海軍兵学校(現在の海上自衛隊幹部候補生学校でも採用されています)の五省を改めて見直してからです。

五省

一 至誠に悖(もと)るなかりしか
一 言行に恥づるなかりしか
一 気力に欠くるなかりしか
一 努力に憾(うら)みなかりしか
一 不精に亘(わた)るなかりしか

行政書士倫理綱領と五省には明らかな違いがあることに気が付きました。

五省は海軍兵学校の生徒に、その日の自身の行動を毎日の終わりに五省に照らし合わせて心の中で振り返る事を、その目的としていました。
私が思うに完全に自身の心に問いかけるものです。

行政書士倫理綱領は外面的・内面的に行政書士を律するものに思えます。
そして、行政書士倫理綱領と五省には決定的な構造的な違いがあることに気が付きました。

ご覧になってお分かりのとおり、行政書士倫理綱領は「1から5」です。五省の表現は「ーつ」で、すべての文言が一つから始まっています。

行政書士倫理綱領の項目間の序列

行政書士倫理綱領をご覧になってお分かりになられる通り、列挙された項目には序列があります。
1.は行政書士倫理綱領の前文に掲げられた使命を受けての項目です。
2.は憲法に掲げられた権利義務に関する項目です。
3.は行政書士の行動指針についてです。
4.は内面に関する項目です。
5.も内面に関する項目なのですが、最後の最後に「ならない」との表現が出てきます。

私にとっては「5.」がとっても異質です。これまで「~をする」と記載してきた行政書士倫理綱領なのですから最後の文章も信義を重んじる」とか「信義を尊(たっと)ぶ」とか肯定的な表現にするのが全体的なバランスを取っているはずと思います。
ところが、行政書士倫理綱領の最後は「信義に反してはならない」です。ここだけネガティブ表現なのです。

蛇足ですが、このブログエントリーでは法令で「ポジティブ表現」は「~することが出来る」ですし、「ネガティブ表現」は「~してはならない」としています。
一見するとポジティブ表現が好ましく感じますが、ネガティブ表現の「~してはならない」とは「それに抵触しなければやっていい」と言う意味です。
なので、法律は「ポジティブ表現」を使った方が無難なんだと思います。ざっと読んだ範囲でも刑法でも「~したものは~する」みたいな「ポジティブ表現」で記載されています。
それは「したか、しなかったか」を判断する余地を残しているからです。「~してはならない」も同じように「したか、しなかったか」を判断するのですが、判断の範囲が「ネガティブ表現」の方がより狭く感じます。

そして私の違和感の最大の要因は項番です。

行政書士倫理綱領は行動指針と読むことが出来ます。そして項番が下がる(数字が大きくなる)ほど細則に近くなる様に感じます。
対して五省はすべての項目が「一」と表現されています。それは5つのすべてのが並列で軽重が無いと言う意味と私は受け取っています。更に五省はすべて内面に語り掛けています。
「その日の自身の行動を五省に照らし合わせて心の中で振り返る事」と書いたのは、その私なりの理解に基づくものです。

最後に

私の大学時代からのモットーは「Follow me(我に続け)」です。これは米国海兵隊の将校の率先垂範の言葉と理解しています。
常に前線の先頭に立ち、部下の模範として行動する心構えである事が私の琴線に触れて私のモットーになりました。
もう最前線に立つ年齢ではありませんが、気持ちとしてはいつまでも「Follow me(我に続け)」でありたいと思っています。

そんな面倒くさい事を思っている私ですが、受任した案件はここまで書き記した事でお分かりいただける様に「最後まで逃げない」です。徹頭徹尾お客様のご意向に寄り添います。

そんな面倒くさい行政書士でよろしければ私のホームページを訪問して頂ければと思います。

「行政書士入江登喜夫事務所のホームページ」